文豪たちは今日も生きている~何でもないはずの日常に潜むレトリック~

30代後半ともなると、日常で降りかかるあらゆる出来事に関心を示せない自分がそこにはいた。「こういう時にはこうやって対処すれば良かったよね。」いつの間にか、ステレオタイプ化された自分。。。そんな ”ありふれた日常” にも、本当は潜んでいるはずの非日常を探しに・・・

リボンの騎士

今日から9月。

まだまだ暑い日が続いてはいるものの、朝晩は涼しく半袖では肌寒ささえ感じるこの頃。

夏の終わりを感じ、いささか寂しさを感じるのは僕だけなのだろうか。

 

 季節の節目を迎えるにあたり、一つの季節が終わっていく、この「一抹の寂しさ」を感じるのって、春夏秋冬で夏だけではないか!?そんなことにふと気付く。

 

冬の終わりは、寒い寒い冬が終わり、ようやく温かい春を迎えらえれる。動植物の息吹を感じられるし、春を迎えられることに喜びを感じる。

春の終わりは、これから暑い暑い夏がやって来ることに、若干の憂鬱さを感じながらも、花火大会や盆踊りお祭り、BBQとか夏の甲子園などなど、イベント盛りだくさん!僕のように夏を満喫できない人間でも(笑)、なんとなく夏がやってくることにウキウキ感を覚えるのだ。

秋の終わりは、寒い寒い冬がやって来ることに身が引き締まる思いをする。そこに「一抹の寂しさ」を感じている余裕みたいなものがない気がする。すぐあとには、せわしい年末が迫ってきていることも手伝っているのだろう。

 

夏の終わりは、次の季節への心の準備みたいな気構えが必要ないし、夏の想い出に浸れる時間的&気持ち的な余裕もあるのだろうか。暑さが和らぎ空が遠くなって秋の空を感じながら、スズムシの鳴き声を聞き...人間の感性に寂しさを訴えかける要因も多いのだろう。

 

 

 

そんな夏の終わり。

毎年の記憶が残りやすいのも夏の終わり。

過去の夏の出来事が、自分史を刻む ”年輪” の役割も果たしてくれる。

 

今年は令和最初の夏だったわけですが、平成時代に、印象深く忘れられない夏の想い出

 がある。。。

 

そんな話でもしてみることにしよう。

 

 

 

福島に在住していた頃の話だ。

 

 

「風俗に一緒に行かないか?」

男なら、そんな誘いを受けたことがあるかもしれない。あって当然だ。

職場とか友人とかからね。

 

こんなとき、僕はいつも返事はNOである。

 

風俗デビュー。

いいかもしれない。

でもなんとなく、、、

「それって、いつでもできるよね。」

と考えてしまう。

 

だから、いつでも断固拒否!みたいな(笑)

 

ところが、人生でたった一度だけ、「この際、後学のためにも一度行ってみるか??」と、その気になったことがあったのだ。

それが福島在住の時だった。

 

 

当時、社宅みたいなところで、みんなで身を寄せ合って生きていた。

そう。「生活」とか「ルームシェア」みたいなオシャレ感一切ゼロの空間(笑)

毎日ひたすら耐えてます!みたいな状況だった。

だから、「生きていた」という言葉がぴったり一致するのだ。

 

そんな、追い詰められた環境の中みんなで生きていると、不思議と『連帯感』というものが湧いてくる。

もはや『家族』の一員みたいな、、、感覚麻痺ってやつ!? (^-^;

 

 

総勢50名ほどで、部屋ごとに7~8名ほどに分かれ、合計六部屋あった。

各部屋の年齢層は、20代前半~30代前半。

一番年下と一番年上だと、約10歳の歳の開きがあった。

 

僕は、所属する部屋の年長者であった。

一番年少の子とは、9歳離れていた。

 

それだけ歳が離れていると、なんというか、弟分みたいになってくる。

他の室員とは、また違った感情で接したくもなってくる。

特別可愛がりたくもなってくる・・・

 

 

そんな折。

この社宅には細々としたルールがあったりでけっこう面倒だったが、一番厳しかったルールはなんといっても ”社宅からの外出&外泊禁止令” である。

 よっぽど、やむを得ない事情がない限り、外の世界には出られないのだ。

 

みんな、それを承知の上、社宅に入ったのだが、いざ社宅での生きる格闘劇が始まると音を上げ始める。

半年間という期間限定ではあるけど、その半年は一年以上の長さにも感じてくる。

外の世界に憧れる。戻りたい戻りたいと・・・

今まで、自分が生きていた世界なのにね(笑)

 

そんな可哀想な子羊たちが、唯一、外の世界に戻れる日があった。

それが真夏のお盆休みの期間。

 

 

 こんな状況下から、解放される日が来たならば・・・

 

ハメを外したくはなりませんか?

人間の自然の感情として。

「今まで頑張ってきた自分にご褒美♪」とばかりに。

 

何か、記念や想い出に残ることでもしておこうかと。

そんな気持ちになるのが、人としての当たり前の感情だとは思いませんか?

 

 

 

さて。ここまで読んでくれた方なら、もう察しがつくだろう。

そうです。

まさに、「風俗デビュー」するなら、このタイミングなんです!(笑)

絶好の機会だと考えて、何も不思議はないんです。

風俗にお盆休みも年末年始もない。悲しいかな、人間の性欲は365日。

 

 で、実際に実行に移すことを決断した男がいた。

それが同じ室員で一番年下の、、、そう、弟分なのであった!

 

 

 「兄さん、一緒に行こう」

僕は、迷った。

迷うに迷った。

 

で結局、断った。

断ってしまった。。。

 

たぶん、僕の人生で、風俗デビューを果たさなかったことをこんなにも後悔することは、金輪際ないだろうなぁ。

 

 

 

弟分の彼が風俗デューを果たしている頃、僕はと言えば・・・

 

峠を攻めていた。

 

当時は、『ホンダのインテグラ』というマニュアルのスポーツカーを乗っていた。

久しぶりに福島から関東圏に帰って来た僕は、神奈川の想い出の地であるヤビツ峠を、無性に走りたくなった。

学生時代、卒業間際に、友達を連れて訪れたこともあったなぁ・・・

 

櫓の上から、小田原市秦野市の夜景を見る。

 

「あの一つ一つの光に、それぞれの人生があって・・・俺という人間はここにいて。。。俺は何をやっているのだろうか。

でも。それでも。あいつと俺とは違う。これが俺という人間なんだ!

強がりでも、なんでも、これがカッコいいと思ってる馬鹿で愚かな人間なんだ!」

 

 

ふと、『リボンの騎士』のことが思い出された。手塚治虫のアニメ。

神様の間違いで、女の子の体に男の子の魂が入って...という話。

ともすると、わたくしはこのリボンの騎士の逆バージョンなの??

 

なんだか、言葉まで女の子っぽくなってきちゃうわ♡

 

 

そんな、夏の日の忘れられない想い出。